JR総武線の亀戸駅北口から北へ、歩いて十五分ほど。錦糸町駅からでもほぼ同じ道のりだという。蔵前橋通り沿いの参道筋には亀戸天神通り商店街が続き、和菓子の老舗や天神ゆかりの品を扱う店が並ぶ。鳥居をくぐる前の道のりから、門前町として生きてきた町の呼吸が伝わってくる。
◆太宰府を映した、東の天満宮
祀られているのは学問の神・菅原道真公。太宰府天満宮の神官で菅原家の後裔にあたる菅原大鳥居信祐が、飛梅で彫った天神像を本所亀戸村に奉祀したのが始まりとされ、寛文二年(1662)には四代将軍徳川家綱がいまの土地を寄進した。公式サイトによると、太宰府の社にならって社殿・回廊・心字池・太鼓橋を営み、以来約三百六十年、「東国天満宮の宗社」として崇敬されてきたという。東宰府天満宮の通称を持ち、東京十社の一つにも数えられる。
境内に入ってまず迎えるのが、心字池に架かる太鼓橋だ。男橋と女橋の二つからなり、池と橋を人の一生に見立てた「三世一念の理」に基づく、太宰府天満宮を模した配置だという。急がず、橋のいちばん高いところで一度立ち止まりたい。歌川広重が『名所江戸百景』に「亀戸天神境内」として描いた眺めの中に、自分も立っていることになる。現在は新東京百景にも選ばれている。
◆花の暦で通う
江戸のころから「亀戸の藤」で知られた花の名所で、公式は「花の天満宮」を掲げる。二月から三月にかけての梅まつりでは三百本以上の梅が咲き、四月下旬から五月上旬には江戸随一と謳われた藤棚の藤まつり、秋には菊まつりが続くという。季節ごとに境内の表情が変わるから、一度きりで済ませず、花の暦に合わせて通うのがこの社の歩き方だろう。開門時間や行事の日程は変わることがあるため、参拝前に公式サイトか社務所で確かめておきたい。
◆帰り道の楽しみ
参道の商店街をぶらぶら戻る道すがら、門前名物のくず餅を土産にするのが定番だという。文化二年(1805)創業の船橋屋のもので、かつては「亀戸餅」とも呼ばれた。時間があれば、近くの亀戸梅屋敷や、勝運の神として知られる亀戸香取神社まで足を延ばしてもいい。学問と勝負事、二つの神様を軸に形づくられてきた町を、そのまま歩いて確かめられる。
