京成押上線の京成曳舟駅で降り、住宅と工場が入り混じる路地を東へ歩く。八分ほど進むと、キラキラ橘商店街の一角に出る。太平洋戦争の空襲を免れたという古い長屋や戦前建築が今も点在し、昼間でも人通りは静かだ。原公園前の信号を過ぎたあたりに、自家焙煎のコーヒーを掲げる店がある。「BLUE BREW COFFEE ROASTER」。2026年4月1日に開業したというこの店は、以前この場所にあったワインバー「お茶とお出汁とワイン un」の建物をリノベーションしたものだという。
◆駅員からバリスタへ
開店の告知や関連記事によれば、オーナーバリスタの関根健太さんは大学卒業後、JR東日本の駅員として2年間勤務していたという。日々の仕事の中で、自分が機械の一部であるように感じ、人と人との繋がりを実感しにくいという思いを抱いたことから、コーヒーの世界への転身を決意したと伝えられている。その後、英語もバリスタの技術もない状態でシドニーへ渡り、現地のカフェ約300軒を訪ね歩いた末に採用され、一年間バリスタとして修行を積んだという。帰国後は東京の有名スペシャルティコーヒー店で一年半ほど抽出技術を学びながら、独学で焙煎を始め、「BLUE BREW」の名でオンライン販売を展開していたと紹介されている。
実店舗を構えるまでの経緯も、この街らしい成り行きだったようだ。2025年3月から、近くのシェアキッチン「ニュー曳舟荘」で毎週日曜日だけの間借り営業を始めたところ、隣接するスペースのオーナー――古民家ワインバー「お茶とお出汁とワイン un」を営んでいた人物――から声をかけられ、閉店を控えていた戦前建築の店舗を引き継ぐ形で独立を決めたという。そうして2026年4月、現在の場所に実店舗がオープンした。
店で扱うのは、生豆から選び抜いたという8種類のスペシャルティコーヒー。フィルターコーヒーやラテ、コールドブリューのほか、チーズケーキやバナナケーキといった自家製スイーツも用意されているという。掲げるコンセプトは「人生の体温を、1°C上げる場所」。コーヒーの温かさや五感への刺激を通じて、訪れた人が少しだけ幸せな気持ちになれる場所を目指しているとされている。
最寄りは京成押上線の京成曳舟駅で、公式サイトでは徒歩8分、紹介記事では徒歩11分とされている。営業時間や定休日、価格などの最新情報は、公式サイトおよび公式Instagram(@bluebrew_tokyo)で確認するのがよさそうだ。
店の前を通るキラキラ橘商店街には、ワインバー「Comptoir Coin」やカレー店「カルロス」など、個性的な飲食店が点在しているという。戦前の空気を残す長屋の街に、駅員から転身したバリスタの店が加わった。曳舟の路地はまた少し、賑わいの色を増したようだ。