日暮里・舎人ライナーの高野駅を降りると、荒川の北岸、尾久橋通りの両側に広がる扇の町だ。1974年の住居表示で生まれた新しい町名で、長く鉄道のない土地だったが、2008年にライナーが通り、高野と扇大橋のふたつの駅ができた。区画整理の進んでいない住宅地には、細く曲がる路地が今も多い。高野駅から徒歩3分、扇大橋駅から徒歩4分。その中間にあたる扇3丁目に、瓦屋根の大きな日本家屋がある。

四十六年の「長兵衛」から「#47」へ

この家屋で1980年4月から営業していたのが、手打そば「長兵衛」である。自家製粉の十割蕎麦を手打ちで出す店で、2022年の地域ニュースは、畳の座敷に障子とちゃぶ台を備えたこの日本家屋を、足立区ではあまり見かけない店として紹介していた。長兵衛は2026年2月、公式サイトで潮時であるとして閉店を告知し、3月31日に46年の営業を終えた。

その建物を引き継ぎ、6月15日に開いたのが「十割蕎麦 葱屋金兵衛 #47」だ。公式サイトと公式Instagramは、四十六年続いた十割蕎麦の長兵衛が葱屋金兵衛 #47として生まれ変わったと説明する。末尾の「#47」は、開店当日に訪れたブロガーによれば、前店の46年を継ぐ意味合いだという。運営会社は公式サイトの表記によればMSBP株式会社。

看板は「千住葱とブランド鴨のせいろ」。公式サイトはこれを、先代が46年守り続けた一番人気と位置づけており、前店の鴨せいろを受け継ぐ一杯にあたる。温かい仕立てもある。蕎麦は少し太めの十割で、素材として千住葱、国産地鶏、ブランド鴨、出汁を掲げる。もうひとつの柱が焼鳥で、国産地鶏を手で刺したおまかせ3本セットを看板に据える。ほかに丼もの、一品料理、車エビの天婦羅。焼鳥は手差し、天ぷらは揚げたて、蕎麦は打ち立て、茹で立て、出来立て、というのが公式サイトの掲げる言葉だ。

写真 千住葱とブランド鴨のせいろ。葱と鴨のつけ汁が主役になるよう俯瞰気味に
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公式Instagramより

建物は前店からのもので、開店日の訪問記によれば、新潟県の豪農の家屋を移築したものだという。公式Instagramが7月3日に投稿した店舗紹介によれば、テーブル席とカウンター席をあわせて48席、高い吹き抜けの天井が特徴で、専用駐車場を8台分備える。満車時は店先の道を左折した先にコインパーキングがあるという。別の訪問記は、古民家の店構えは残しつつ、内装はラウンジのような雰囲気に改められたと伝えている。注文はQRコードで行う方式で、紙のメニューも用意されているそうだ。

写真 吹き抜けの高い天井とテーブル席・カウンター席が入る店内全景(店の許可を得て)

行き方は、日暮里・舎人ライナーの高野駅から徒歩3分、扇大橋駅から徒歩4分。住所は足立区扇3丁目3-6。首都高中央環状線の扇大橋出入口も近い。営業時間や定休日、価格などの最新情報は、公式サイトと公式Instagram(@kinbee47)で確かめてほしい。

鉄道が通って18年、路地の多い町に、46年の年月を「#47」と数え直した蕎麦屋がある。名前は新しくなったが、瓦屋根と鴨せいろは前の店から引き継いだ。町の時間の続きを、この家屋の下でもう一度数えていく店だ。