都営大江戸線の両国駅A3出口から歩いて五分、JR総武線の東口からなら九分ほど。区内循環バスなら「すみだ北斎美術館前」で降りればすぐだ。国技館へ向かう人の流れから外れて亀沢の住宅地に入っていくと、アルミパネルの外壁に空と町並みを映す建物が現れる。このあたりはかつて本所割下水と呼ばれた土地。葛飾北斎はここで生まれたとされ、九十年の生涯のほとんどを、いまの墨田区内で過ごしたという。

割下水に建った、鏡のような箱

美術館が開いたのは2016年11月。区立の施設で、北斎の縁の地そのものに設けられたのだと観光協会のサイトは記している。設計は妹島和世建築設計事務所。周囲の風景が映り込むアルミパネルの外装は、2018年度の第59回BCS賞を受けたという。展示を見る前に、建物のまわりをひと回りして、外壁に映る下町の空を眺めてから入るのがいい。

妹島和世設計によるすみだ北斎美術館の外観(2016年開館)

写真: Kakidai / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

収蔵品の柱は二つある。北斎研究者ピーター・モースの旧蔵品約六百点は、遺族から墨田区へ一括で譲られたもの。これに浮世絵研究の第一人者・楢崎宗重が区へ寄付した約四百八十点が並ぶ。常設展は北斎の生涯に沿って人物像と作品、すみだとの関わりをたどる構成で、企画展は年に何度か入れ替わり、時期ごとに異なる北斎像を見せているという。屋内施設だから天気を選ばない。開館時間や休館日、企画展の会期と観覧料は変わることがあるので、出かける前に公式サイトのご利用案内で確かめておきたい。

帰り道の楽しみ

帰りは両国駅の方へゆっくり歩くのがいい。国技館を擁する相撲の街で、周辺には江戸東京博物館や江戸表具博物館といった文化施設、伝統工芸の店が集まっている。観光協会は周辺スポットとして法性寺や銭湯「さくら湯」も挙げており、北斎を見たあとに湯へ寄ってから総武線に乗る、という締めくくりもある。北斎が生まれ育った町を、そのまま歩いて帰る。それ自体が、この美術館のもうひとつの展示室のような道のりだ。