京成押上線の京成曳舟駅から、歩いて五分ほど。再開発の進む駅周辺の新しい街並みを抜けると、風景がふっと低くなる。ここ墨田区京島は、関東大震災でも東京大空襲でも火災を免れ、大正時代からの長屋が今も残る町だという。細い路地と町工場が混在する一角に、全長約四七〇メートル、幅五メートルの通りが延びている。下町人情キラキラ橘商店街である。

映画館「橘館」に始まる名前

名前の由来は昭和六年、この通りにできた映画館「橘館」だという。戦前は「橘館通り」と呼ばれていたそうだ。協同組合が設立されたのは昭和三十五年。「下町人情キラキラ橘商店街」という長い愛称が付いたのは昭和六十年、街路灯とカラー舗装を改修したのがきっかけだったと公式サイトは記している。正式名称は今も、向島橘銀座商店街協同組合のままである。

通りの特色は惣菜の店が多いことで、乾物などを商う店とともに軒を連ね、墨田区内でも有力な商店街の一つに数えられるという。東京都の地域資源サイトには、ゆず入り饅頭「キラキラのかおり」や、鶏皮で包んだ「チキン餃子」といった名物が紹介されている。営業時間や定休日は店ごとに異なるため、目当ての店があるなら公式サイトで確かめてから出かけたい。令和三年度には、イベント「キラキラ橘☆ほくほく!北斎」で東京商店街グランプリを受賞したと墨田区のウェブサイトにある。

写真 惣菜店の店先。ガラスケースに並ぶ総菜と、買い物かごを提げて通りを行き交う人

第四日曜の朝に合わせて

訪ねる日を選べるなら、毎月第四日曜(十二月のみ第二日曜)に開かれる朝市に合わせたい。昭和五十五年から続く行事だという。ほかにも「びっくら市」や「つまみぐいウォーク」、七夕まつり、夜市と、年間を通じて催しが絶えない。日程は公式サイトに掲載されているので、出かける前に確認しておくと確実だ。ドラマや映画のロケ地にもなる町並みには、催しのない日でも、ふだんの下町の時間がゆっくり流れている。

帰り道の楽しみ

商店街の南側は押上に隣接していて、帰りはそのまま東京スカイツリーの方面へ歩いて抜けられる。あるいは来た道を戻り、京成曳舟駅周辺の再開発された街並みと、商店街周辺に残る昭和の路地との対比を確かめるのもいい。大正の長屋と令和の再開発、そのあいだの四七〇メートル。行きと帰りで別の時代を歩けるのが、この商店街の散歩の妙である。