「番台からはね、町が全部見えるの」。母が言う。常連の顔色、子どもの背丈、路地の噂。七十年分の定点観測が、この小さな台の上にある。

継いでくれとは一度も言わなかった。でも、辞めないでいてくれて、よかった。
写真 浴場、湯気とタイル絵

娘は薪で湯を沸かす。ガスより手間はかかるが、「湯がやわらかい」と常連は言う。今日も十五時、暖簾が出る。