JR総武線の新小岩駅、南口へ降りる。ロータリーを抜けると、通りの両側に飲食店の看板が途切れずに続く。施設のプレスリリースがこの町を「グルメのまち新小岩」と紹介していたのも、この密度を見れば大げさではないとわかる。その並びの、新小岩2丁目。三階建ての建物の一階に、朝の台所のような名前の店があるという。おにぎりとみそ汁のテイクアウト専門店「みそ日和」。2026年6月5日に開店したと、地域メディアの記事が伝えている。
◆はじまりの場所としてのシェアキッチン
みそ日和が入るのは「東京tebiki隣」。プレスリリースによれば、飲食業に特化したインキュベーションラボとして2024年6月30日に完成した三階建ての施設だ。一階は飲食店営業許可に対応したキッチンを三つ備えるシェアキッチンで、うち一つは菓子製造業許可の取得にも対応するという。二階はスタジオキッチン、三階はコワーキングスペース、屋上はオープンスペース。テスト出店や、副業からの飲食業スタートを受け止める作りになっている。運営側は経営やブランディングの勉強会、メニュー開発の支援、飲食店運営の現場シミュレーションを用意し、卒業後の出店場所の確保や内装工事までサポートするとしている。
だから、この一階のキッチンからは小さな店が次々と生まれる。コロッケ屋「コロッケ丸」、焼き菓子の「みゅう」。2026年6月下旬にはワインバー「Peridot」と韓国キンパ専門店「MOOKI MaKI」が相次いで開店したと報じられている。逆に、ここを離れて自分の店を構える「卒業」もある。シフォンケーキの「ぷーりんシフォン」が最終出店を迎えたことを、同じ地域メディアが祝いの言葉とともに伝えていた。出ていく者と入ってくる者がいて、一階の顔ぶれは季節ごとに入れ替わっていく。
◆おにぎりと、みそ汁と
みそ日和が選んだのは、おにぎりとみそ汁だった。地域メディアの記事によれば、塩むすび二個と選べるみそ汁を組み合わせた「朝セット」、選べるおにぎり二個に選べるみそ汁、卵焼き、お新香が付く「昼セット」を出している。みそ汁は日替わりの「基本のみそ汁」と豚汁から選ぶ。店主の宮永さんは、体に優しい「ほっとする」味を提供したいという思いから、このシェアキッチンへの出店を決めたと記事は伝えている。
宮永さんは葛飾区の出身だという。同じ記事のなかで、葛飾区出身だからこそ葛飾区で店を出せたらいい、といずれ自身の店を構えることを目標として語っている。新小岩のシェアキッチンで握るおにぎりは、その道筋の途中にある。生まれた町で店を持つという地点へ向かう、最初の一歩だ。
行き方は難しくない。新小岩駅の南口を出て、徒歩3分。「東京tebiki隣」の一階だ。ただし、シェアキッチンの出店は日によって顔ぶれが変わる場所でもある。訪ねる前に、公式Instagram(@misobiyori.0605)で最新の営業情報を確かめてから向かうのが確実だろう。
駅前の賑やかな通りから、ほんの数分。誰かが自分の店を持つために立っている台所が、この町にはある。おにぎりとみそ汁という、いちばん簡素な組み合わせで。「川の東」の新しい店は、たいていこういう静かな場所から始まっている。