京成立石の駅を降りて、仲見世のアーケードをくぐる。昼でも薄暗い通路の先に、煮込みの湯気が見えた。この景色があと何年もつのか、正確に知る人はいない。

「先代の鍋」を守る人

創業から六十年、継ぎ足してきた煮込みの鍋がある。「鍋だけは、火事になっても持って逃げろって言われてます」。店主は笑うが、目は笑っていない。

写真 煮込み鍋、湯気の立つ手元
再開発が悪いとは言わないよ。ただ、この路地の呑み方は、ビルの中には持っていけない。
呑んべ横丁・店主

夕方五時、暖簾が出る。常連が一人、また一人と丸椅子に腰を下ろす。名前は知らなくても顔は知っている。そういう距離感が、この町の酒をうまくする。

前夜の歩き方

取材の最後に、店主たちに同じ質問をした。「いま、立石に来る人に何をすすめますか」。答えはみな同じだった。——まず歩け。それから呑め。